私は団塊の世代で、企業戦士、モーレツ社員などと呼ばれ、仕事一筋に生きてきました。そして還暦を迎える頃、ふと老後を想像した時に、自分は会社員としての充実感や満足感はあるものの、会社人間で一般社会では通用しないのではないか…。そんな考えが頭をよぎり、定年退職後の人生に不安を感じました。
それから、改めて社会人の基礎を学ぶ心構えで、いくつか通信教育の資料を請求したところ、生きる力を学ぶと記載されていた佛教大学通信教育課程に興味を持ちました。正に生き方を模索していた時でしたし、数ある学びの中でも仏教なら60歳からでも遅くはなさそうだ。そう思い、「企業人」から「学び人」へ、新たな人生をスタートすることを決意しました。
大学に進学するまで、仏教は葬儀や法事でしか触れることがなく、供養のためのものというイメージでした。しかし、本来の仏教の教えは「今とこれからをどう生きるのか」がテーマ。人として正しく生きる道が具体的に説かれたものだと知ってからは、ますます興味が膨らみました。
知っているようで知らなかった仏教の世界は本当に奥深く、学び始めるとその面白さや知識が広がる喜びを日々感じると同時に、この歳まで知らなかったことへの恥ずかしさも痛感しました。また、学びを通して自らの生き様を見つめ直し、短気だった自分がいつしか人に対して許す気持ちや優しさを覚え始めたのは、大きな変化だと感じています。
さらに、大学の教室で学ぶスクーリングも、大きな楽しみの一つでした。クラスには若い学生さんが多い反面、私より年上の方もいらっしゃって驚きました。みなさん熱い思いを持って生き生きと学んでいる姿に、良い刺激を受けました。
結局大学には5年半在籍して、思う存分学びを深めました。おかげで日々目標を持って行動でき、充実した毎日を送れたと思います。卒業論文には苦戦しましたが、1年5ヶ月かけてなんとか書き上げられたときは、これまで学んだことの集大成を形にできたという達成感で胸がいっぱいになりました。卒業がゴールではなく、ここでようやくスタートラインに立ったようなものだと感じています。2017年からは大学院に入学し、より学びを深めていきたいと思っています。