通信教育クロストーク

2016年01月06日
オルタナティブライフ

「学部長の手帖から」
教育学部長 篠原 正典(しのはら まさのり)

 様々に異なる多くのことを1日でやってしまうと、1日が長く感じて得した気分になる。一方、忙しさは同じでも、同じ内容を日々行っていると、1日があっというまに過ぎ、もったいなかったと感じる。最近、後者の感覚が多い。毎日、夜まで同じような仕事に追われている。そろそろ残りの人生を考える年齢となってきたこともあって、1日が長く感じられるように仕事とは違う多くのことをやりたい。しかも、楽しいことを。

 最近、あまりやらなくなったが、ジョギングや水泳など体を動かしているときは気分がいい。仕事のことは全く考えない、というより結構ハードな運動であることから、仕事のことを考えられる余裕はない。これがスポーツを趣味の範囲でとらえているときの魅力である。日頃の仕事を忘れられるほんの短い時間ではあるが、適度な疲労感が魅力である。こんな魅力あるスポーツからも、最近ではなかなか時間が取れないという言い訳をして遠ざかっている。

 もう10年以上も前になるが、ふとしたことからガラスに絵を描くことを始めた。そこから少しずつ暇ができたらやるようにしている。ルータという歯医者が治療に使うような器具を使って、ガラスを彫って絵を描くものである。グラスリッツェンと言われる手法に近いが、邪道で全て自己流であり、正統派が見たら「何だこれ?」と言われるかもしれない。趣味は楽しければそれでいい。材料費はほとんどかからない。だから継続できる。これは大事な条件である。ただ、作品の制作時間がかかるため、1年に数作品程度しかできていない。この作業は仕事と全く異なるものであるから、これをやっているときは仕事のことは全て頭から消えてしまう。これも大事な条件である。

 今はまだ限られた余裕のある時間に少しずつガラスに絵を描いているが、大学を退職した後はオルタナティブライフとして楽しんでいこうと思っている。1年に10数点は作れそうである。大学を卒業してから仕事の種類や領域を何回か切り替えてきた。50歳近くまでは、まさか教育学部の教員になるとは夢にも思わず、遭遇した人生の岐路でその都度判断してきた。これまでも大きな決断ではあったが、次も大きく生活を変えることになるだろう。一生、同じような仕事をするのもよいが、予め人生にオルタナティブライフを持つ計画を考えてもよいと思う。それにより、今をそして将来をさらに充実できるかもしれない。

(佛大通信2016年1月号より)

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