社会人が小学校の先生を目指すにあたり知っておきたい基礎知識
社会人になって改めて、小学…
「学部長の手帖から」
教育学部長 篠原 正典(しのはら まさのり)
2年ほど前になると思う。1号館西側入り口付近のアスファルトのヒビ割れた狭い隙間から、10㎝程伸びた茎に6個のピンクの花を咲かせた草を見つけた。事典で調べてみると金魚草に間違いなさそうである。しかし、近くに金魚草は生えていない。ましてや一面アスファルトに覆われた場所であるから、雑草すら見当たらない。人が植えたわけでもない。どこから種が飛んできたのだろうか。そこに土は全く見当たらない。どうやって根を下しているのだろうか。花が全部枯れて落ちたかと思うと、短い茎にまた一杯の新たな花をつけた。3回もその健気さを見せてくれた。こんなアスファルトの地面の上に、こんな短い茎に、こんないっぱいの花を咲かせた金魚草、おそらく最初で最後に見る光景だろう。その偶然と自然のたくましさを、宝物を見つけたかのように知人の教職員に伝えたことを思い出す。
それから去年の7月のことである。11号館の入り口付近に植えてある4m程度しかない小さなケヤキの樹に蝉を見つけた。6~7㎝の体長と「シャンシャン・・・」と鳴くことからクマゼミだと思われる。この声を聞くと毎年夏が来たことを感じる。蝉が枝に止まっているなんて珍しくもないが、この光景には金魚草と同じように驚いた。普段写真を撮らない私が思わず写真を撮った。半径50㎝の領域に12匹以上の蝉がとまっていたのである。もしかしたら、前日に一斉に羽化した蝉かもしれない。そう思うと、この光景もほんの短い瞬間だったのかもしれない。繰り返す日常の生活の中で、稀有な偶然の出来事に出会ったことに何となく得した気持ちと安らぎを感じた。
佛教大学の狭い敷地の中でも四季を感じさせ、自然のたくましさを感じさせるものが多くあるようだ。スクーリング等で大学に来られた際に「偶然のできごと」を探してみてはいかがでしょうか。
(佛大通信2015年7月号より)