通信教育クロストーク

2018年11月28日
ビートルズは永遠!聖地で熱く語る彼らのすばらしさ。

KYOTO TIME TRAVEL
伝統をつなぐ・未来をつくる・京都をめぐる

左京区百万遍の一角に建つビル入口には、ユニオンジャック。その地下に潜むのが、ビートルズファンの聖地「RINGO」。ビートルズの音楽と共に生きてきたマスターを、同じく熱狂的なビートルズファンである、教育学部教育学科の高見仁志先生が訪ねた。

RINGO
40数年前にオープンした、“ビートルズに出合う”ための店。オープン当初は、昼に開店して夜の10時ごろには閉店する“健全な”喫茶店だったが、今は夕方に開店する“ミッドナイト”型のバーになった。現役の大学生はもちろん、社会人や観光客、ミュージシャンなどに幅広く愛されている。ホテルで紹介を受けてわざわざ訪れる外国人客も近年は少なくない。ほの暗い店内には、常にビートルズの音楽と映像が流れている。

山本 博(やまもと ひろし)
現存するビートルズオンリー店のなかで最も古い(と思われる)バーのマスター。若かりし頃、「シー・ラブズ・ユー」を聴いて衝撃を受け、超エリートの道を外れる。バンドを結成し、成功を試みるもあえなく解散。「一日中ビートルズに浸っている方法はないものか」と熟考を重ねた結果、喫茶店の開業を思いつく。以来、念願通りに大好きなビートルズ漬の毎日を送っている。

高見 仁志(たかみ ひとし)
佛教大学教育学部教育学科教授。
兵庫教育大学教育学部在学中から音楽活動を開始。大阪・京都・神戸を中心にライブ活動を続ける。卒業後、兵庫県の公立小学校教諭として18年間勤務。子どもに教えられた日々のなかで「先生を育てる仕事に就きたい」と思い、大学教員の道に進む。佛大で教鞭をとるほか、経験談や弾き語りを中心にする講演も行っている。

まだ明るい時間帯、ユニオンジャックを眺めながら階段を下りる。目が慣れないせいか、暗闇に迷い込んだような錯覚に陥る、ビートルズ一色の「RINGO」で対談ははじまった。

実は、初めてじゃないんですよ

高見:いやー、懐かしいです。去年久しぶりに訪れて。学生時代は通ってたんです。店の入口には公衆電話BOX があって。

山本:よく覚えてるね~。今は物置ですわ(笑)。てことは初対面じゃないんですね。

高見:営業中はビートルズがガンガンかかっているじゃないですか。みんな思い思いに過ごしてるから、僕は一人でジョン・レノンのパートばかりを歌って。大きな声で歌っていたら、マスターが「ジョンのパートですね」って声かけてくださったことがあって、めちゃくちゃうれしかった記憶があります。「RINGO」はオープンして何年目ですか?

山本:44年ぐらいかなぁ。よく覚えてない(笑)。高見:日本のビートルズバーはここだけですか?

山本:他にもあるはずですが、おそらく一番古いのと違うかな。自分でもよく続いてると思いますよ。

高見:僕も学生時代は革ジャンで、ジョンのアルバム「ロックンロール」のジャケットみたいな格好で来てました。

山本:さすが。ジョンの良さは「イマジン」じゃない。あれも名曲やけど…。

高見:カヴァー曲ですが「ビー・バップ・ア・ルーラ」を聴くと、まさにジョンやと思います。ピアノ曲だとバラード風になってくるけど、あれは本当のジョンじゃない(笑)。

山本:そんなことも学校で教えてるの?

高見:兵庫県のローカルFM局で、「ビートルズ解体新書」っていう番組を持っていました。曲の背景などを解説するのですが、大学でも息ぬきでたまに和声の解説をします。ところで、マスターはジョン派ですか?

山本:僕は、4人均等に、4分の1ずつ好きで、それでもビートルズとは、ポール・マッカートニーやと思ってます。

高見:さすが上級者!一般的には、ジョンファンとポールファンに分かれることが多いですけど、生き様とかイメージはジョンが担っている。ポールは、和声とかコード進行とかメロディとかの担当。バックのベースラインが…とか話す人はポールファンが多いですね。

山本:確かに。「俺の生き方は…」って話し出す人はジョンファンが多いね(笑)。

ビートルズを語るとマスターも高見先生も、往年の友人のようで、話は尽きない。

ビートルズファンになったきっかけは?

高見:ビートルズに出合ったのはいつですか?

山本:いつ頃かは覚えてないけど、藤井大丸(下京区)ってデパートに昔、フロアごとにジュークボックスがあって、それで「プリーズ・ミスター・ポストマン」を聴いたんです。おかしな曲やな~と思って、友達に知ってるか聞いたら、「イギリスのコーラスグループ」やと。

高見:最高のコーラスグループです!

山本:そうそう。で、レコード持ってるヤツを紹介してもらって、聴かせてもらったのが「シー・ラブズ・ユー」。頭をボカン!と殴られたような衝撃を受けました。そこからはもう、まっしぐらです。

高見:そう、ビートルズにはボカン!がある。

山本:先生はどうやって入ったん?

高見:僕は小学校5年生です。友達に「ヘルプ」を聴かせてもらって、良いなぁ~と思ってたら、しばらくして来日公演のリバイバル放送がありまして。この前、トランプ米大統領が来日した時でさえ走らせた首都高速を通行止めにして、ホテルかどこかに乗り付けるバックに、「ミスター・ムーンライト」が流れるってシーンがテレビで放送されて…。もうその瞬間でアウトでした。

山本:ビートルズの音に殴られて(笑)。

高見:家族も顧みず道を正しく歩む、スレイブ(奴隷)状態が今も続いています(笑)。

山本:最近もポールのコンサート行ってる?

高見:はい、最近も行きました!あの年齢(公演当時70歳)でも、すごい声が出てますね。

山本:死ぬまでロックンローラーやね。

高見:バラードメーカーと思われがちですけど、今もガンガンです。

山本:僕は去年の6月、ジュリアン・レノンに会ってきました。

高見:え、ジョンの息子のジュリアンですか?

山本:そうそう。祇園に高級なカメラ、ライカの京都店があるんですけど、そこでジュリアンが写真展を開いたんです。そのオープニングレセプションをするから来てくださいとの招待状がなぜか届きまして。

高見:さすが、マスター!

山本:いやいや、理由はわからないんですけど、とにかく行ってきました。SPはいるわ、高そうなシャンパンは飲み放題やわ、見たことないようなアテというかデザートが並んでて、タダだと聞いて飲む飲む(笑)。英語できないし、ジュリアンが何を話しているかはわからなかったけれど、ビートルズの曲しかかけない店を長いことやってて、みたいな話をして、握手してきました。本当にカッコ良くて、めちゃくちゃ気さくでした。

高見:すごいなぁ。似ていましたか?ジョンと。

山本:似ているというか、ジョンの遺伝子にさわれたことがうれしかったね。

4人のメンバーと彼らを世に送り出すプロデューサーが出会わなければ、ビートルズは生まれなかったという。

奇跡の連続の賜物、ビートルズ

高見:僕はこの店の入口の階段を下りる感じが、いかにも聖地に赴く雰囲気がして好きです。伏見稲荷大社とか貴船神社の参道、そんな風にとらえています(笑)。百万遍辺りは実はロックの中心でしたよね。西部講堂もあるし。

山本:上田正樹に憂歌団とかが西部講堂でガンガンやってましたからね。

高見:ここに通っていた頃にはランチやカフェタイムがあって、エプスタインランチ(当時のメニュー)を頂きました。今も生地から手作りのピザは健在ですけど、営業は夜型になりました。客層は変わりましたか?

山本:昔みたいに無茶なヤツはおらんようになったね。大人しくなって飲むのもバーボンより、カルーアミルクとかマンゴーミルクとか(笑)。

高見:軽く聴いていく人が多い?

山本:なかには、「マスター、今日は何の日か知ってますか」とか聞いてくるから、知らないと答えると、「ジョンが新しい靴を履いた日なんです」とか教えてくれるような人もいます。

高見:ビートルズの凄さは、自分で演奏するとわかります。歌い方、声の出し方、演奏、マネできないから。しかもあの時代、シンセサイザーもないし、いろんな楽器を演奏してますよね。

山本:本当にその通り。僕はビートルズマニアとはちょっと違う。ビートルズの音楽が好きなんです。店内のポスターなどは自分のものもあるけれども、多くはお客さんが持ち込んだもの。バッジを集めたりはしない(笑)。

高見:学問的にビートルズを深める人もおられて、和声とか、パーカッションについて研究する人とかは理解できます。社会学的に分析とかになると、僕の守備範囲の外です。ビートルズって奇跡の存在。ジョンとポールが出会って、ジョージ・ハリスンとリンゴ・スターが加わり、さらにジョージ・マーティンとブライアン・エプスタインというブレインを得たからこそ、時代を超えて愛されるミュージシャンになった。

山本:ビートルズの魅力って何ですかと良く聞かれるのよ。それを語れたら魅力じゃない。わからないから聴き続けてる。1+1=2じゃないところが良いんやから。

高見:今日は貴重な話がたくさん聞けて本当に幸せでした。この懐かしい雰囲気をぜひ今の学生にも体験してもらいたいと、僕は強く思っています。ありがとうございました!

(佛大通信2018年6月号より)

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