社会人が小学校の先生を目指すにあたり知っておきたい基礎知識
社会人になって改めて、小学…
仏教学部 仏教学科 浄土・仏教コース 卒業生
入学の動機
仕事を退き、第二の人生は自分を見つめ直したいと思いました。己の心のあり様を問うには仏教の思想を学ぶ必要があると、佛教大学の通信教育課程を志望しました。私は登山が趣味で日本修験学会の会員です。もともと仏教については関心がありましたし、修験道と仏教の関わり合いについて興味を持っていたのも動機の一つでもあります。また、高校を卒業して大学で学びたかったのですが、諦めざるを得なかった境遇にありました。大学で学んでみたい思いをずっと持ち続けていました。
私の学習法
高卒なので一般教養などの学習も行わなければなりません。仏教を学びたいのに、なんで語学や経済学、政治学、心理学などを学ばなければならないのだと思うことも正直ありました。しかし、学ぶことは素晴らしいことです。学問的に掘り下げて学べば、政治や経済についての見方が深まっていきます。語学は約50年も前に学んだ英語を選択しました。授業について行けるか心配しましたが、もともと好きな教科だったので不思議と英語感覚が蘇ってくるのです。
テキスト履修はかなりの労力がかかります。一度ぐらい読んでも何が書かれてあるのかさっぱり飲みこめません。ところが何度か読むうちに内容が見えてきます。並川先生に「理解できなかったら理解できるまで教科書を読みなさい」と教えていただきました。20回から30回と教科書を読みました。そして要点を書く、要点を何度か声に出して読む、試験の直前には要点をさらに手書きでまとめて科目最終試験に臨みました。手で書くところにミソがあります。記憶力が衰えてきた現在、手で書くと語句が頭に入ります。科目最終試験で評価が10点という科目がありました。答案を書きながら「これはダメだ」と思いました。もちろん再試験です。でも落ち込むことなく逆に意欲に燃えました。
リポートの作成については何度も書き直すことは当然の作業です。読み返すと「筋が通っていない」、「文章表現がまずい」、「誤字や脱字」などが見つかります。何度か書き直しているうちに、なんとか満足できるものが出来上がります。先生の評価は別にして。リポート課題の提出は、文章の書き方をあらためて学ぶ機会にもなりました。
スクーリング履修では若い人たちや同年代の学友と机を共にしました。特に私よりも年を重ねた学友の学ぶ情熱はいい刺激になりました。学友のなかにはスクーリングをまとめて受講し、直ぐ現地でリポートを提出する方もいました。私にはそんな力はありません。自宅に帰って関連文献を読み、授業の内容を振り返りリポートを書きました。私は学友にも会えるし、京都の文化にも触れ、スクーリングに出かける楽しみを組み込んで、テキスト履修も進めていくやり方でした。同世代の方と友達になり、いろいろ学習方法を紹介し合ったことも有益でした。学習方法については自身にあったやり方で、先生、学友の助言も得て修正しながら進めることが必要でしょう。
卒業論文
卒業論文のテーマは「『女性差別論』とゴータマ・ブッダ」でした。「仏教は女性差別の宗教だ」などと書かれた書物を読んだことがきっかけでした。仏教は男女平等の立場であり、男女差別を思わせるような偈などは、出家者への説法であり、女性差別を説いていないと思っていました。指導教授のご指導を頂き、原始仏教の最古層にふれ、仏教は「女性」をどのようにとらえていたのかを探り、釈尊の真意を読みとってみたいと卒業論文のテーマに決めました。
まずは論文の展開を決め、同一の趣旨の論文がないかを探しました。論文の流れに沿ってさまざまな文献の古本を買ったり、図書館にでかけたり、文献を読み漁りました。論文にはほぼ一年を費やしました。自分所有の文献にはテーマに関する記述の頁に付箋紙を挟み(糊の付いた付箋紙は剥がすとき本が破けることがあります。ご注意を)、その部分を書き写す作業をしました。書き写したものは一冊の本?になるくらいの分量です。書いていると論文に書きたいことが整理されていきました。頁数の多い書物を読むことも苦痛にならなくなりました。学べば新鮮な喜びと感動が得られます。
お陰様で担当の先生から一度で清書許可を頂き、荷が下りたような思いでした。しかし、ここからが大変でした。先生のご指導を受けながら再度参考文献を読み直すなどしました。論文は参考文献の記述の丸写しではありません。自らのテーマに対する考えを明確に示さねばなりません。読む、書き、読みを繰り返すうちに考えが鮮明になっていきました。大変な作業でしたし、口頭試問を受ける日は食事も喉を通らなかったのが正直な告白です。
もともと仏教を学びたかったので、仏教関連の科目は、内容が難しくても学ぶ意欲が湧いてきます。しかし、卒業するには一般教養でも単位を取得しなければなりません。これら「総合」科目の学習に費やす時間と労力はかなりのものです。その間は仏教にかかわる学習は後回しになります。そこで表現が的確かどうかわかりませんが、「仏教感覚」を失わないように『スッタニパータ』や『ダンマパダ』を毎日のように読んでいました。
学び続ける
年齢を重ねると深夜までの学習はなかなか困難です。早起きをして学習しました。学習を続けてこられたのは家族の励ましや支えがあったことは言うまでもありません。お陰様で投げ出そうと思ったことはありませんでした。
卒業に6年の歳月を費やしましたが、学ぶことの素晴らしさを改めて体感しました。古稀を迎え自らに鞭打ち、励まし、緊張感を持ち続けてきたことを再び続けることはなかなか難しいことです。しかし「修験道と仏教」については学びたい課題でもあります。さらに学び続けようと決意を新たにして準備を進めています。
~プロフィール~
2011年4月 佛教大学仏教学部仏教学科浄土・仏教コース入学
2017年3月 同卒業
(佛大通信2018年5月号より)