通信教育クロストーク

2016年10月27日
京都の秋の三つの楽しみ

「学部長の手帖から」
仏教学部長 松永 知海(まつなが ちかい)

 10月になると、いろいろな催し物や展覧会があって、毎週のように行きたいところや見たいところがあり、数え出したらきりがない。今月、京都国立博物館では「没後150年坂本龍馬」展(15日から)が開催され、奈良国立博物館では「正倉院展」(22日から)も開催されるという。どんな出品があるのだろうか。また、今春に開館した祇園にある漢字博物館はどんな模様替えをするのか、それらの図録だけでも今から楽しみだ。

 二つ目は、そうした特別展とは別に、京都古書研究会が主催する「秋の古本まつり―古本供養と青空古本まつり―」(29日から)も例年の楽しみだ。今回は第40回となり、「春の古本まつり」「夏の納涼古本まつり」と並んで回数が重ねられてきた。

 以前、住んでいた所が、百万遍に近かったこともあり、この知恩寺で行われる「古本まつり」には、よく出かけた。近世・近代の研究者や知り合いの僧侶・同窓生などを見かけて、声を掛けたり、掛けられたりの出会いもある。

 仏教書籍の和古書の出品は少ないが、そんな場所での古本との出遭いは嬉しい。「眼福」という言葉があるが、この「古本まつり」全体が私にとってのテーマパークだ。本の体裁をとっていないものを含めた売り物の中には、どんな図書館にも分類整理されていない「絵はがき」や「内容見本」、「パンフレット」「広告」「ポスター」の類や「紙芝居」「レコード」なども雑多に並び、堆く積み上げられている。それらが発する仄かな匂いを嗅ぎ分け、目で見て、手に取って学ぶ楽しみ。行く前からワクワクする。論文の題材やヒントが見つかれば、なお嬉しい。

 研究室にある『観仏三昧海経』10巻3冊は、古本まつりの成果の一つだ。黄檗版を底本にしながら高麗版と校訂して寛政6年(1794)典寿が出版したもので、増上寺智堂が序文をよせている。もちろん、近世の出版物なので所蔵者は『仏書解説大辞典』をみても大正大学はじめ記載があるが、浄土宗僧の出版であり、さらに高麗版大蔵経と校訂してある、という情報まではない。のちに論文にも引用することができた。

 最後は、京都各宗学校連合会と佛教大学宗教文化ミュージアムとが共催する「近代の大蔵経・宗典叢書と仏教辞典類の刊行」の展覧会(10月29日~11月20日)が、広沢校地の宗教文化ミュージアムで開催される。大正4年(1915)に大正天皇の御即位式が京都御所で行われた祝賀行事として、京都各宗学校の加盟校が第1回を開催してから、今年が101回目の京都の秋の年中行事だ。法供養・講演会も予定されている。関係者の一人としても、今から待ち遠しい。

(佛大通信2016年10月号より)

TEL : (075)491-0239
受付時間 10:00~17:00(13:00~14:00を除く。木・日・祝日休み)
ページトップ