社会人が小学校の先生を目指すにあたり知っておきたい基礎知識
社会人になって改めて、小学…
文学部 人文学科 浄土・仏教コース 卒業生
1.入学のきっかけ
ちょうどあの頃、いくつかの出会いがありました。まず五木寛之の『親鸞』です。新聞に小説が連載されており、毎日読むのが楽しみでした。連載が終わった時に、法然はすごい人なんだと思いました。次いでカルチャーセンターで、法然の「選択本願念仏集」の第三章を学びました。法然は本気ですよ、と熱く語る講師の言葉が心に残りました。さらに、京都造形芸術大学の通信制を卒業した女性と知り合いました。彼女は私よりも年上で70歳を越えていましたが、私に「まだ若いんだからできるわよ。がんばって」と励ましてくれました。このように、出会いがいくつか重なって、佛教大学に入学することになりました。
2.学ぶこと・人との出会い
なんと言ってもスクーリングは、楽しいの一言に尽きます。同じ志をもつ人たちとの語らいはこの上もない喜びです。大学で学べるという自分の立場を、心から嬉しく、またありがたく思いました。 90歳近い高齢者の学ぶ姿や、僕らはこの後死ぬことしかないんだよ、とさりげなく語られた言葉、また母親の介護をしながら学ぶ女性など、さまざまな人たちと接することができました。しかし、いろいろな人生を歩んでいても、仏教を学びたいという思いは共通しています。その思いがあるからこそ、教室では以前からの知り合いのように周りの人と話すことができました。仏教の場合は、年齢や男女の違いに関係なく話せるという利点があると思いました。
一方、テキスト履修は、スクーリングとは異なり本当に困難でした。これは孤独な学習でした。最初に教科書を手にした時、その厚さとぎっしり詰まった中身に思わずためいきが出ました。なかなか手が付けられずそのままにしてありましたが、基礎ゼミナールの講座で考えが変わりました。並川孝儀先生の「早くテキスト履修をやりなさい。スクーリングもテキスト履修も卒業論文のためにやるんです。嫌なことからやりなさい」の一言で、目が覚めました。そしてそれ以後は、嫌なことからやらなきゃと自分に言い聞かせました。私の場合は、近くの図書館に通って学習を進めたことがよかったと思います。朝から夕方まで、弁当と座布団持参で詰めました。周りを見わたすと、資格試験の受験勉強をする人が目立ちました。彼ら彼女らは私よりもずっと苦労している、それに比較して自分は甘い、そう思いました。図書館の1日は短く感じます。図書館に詰めて集中して学習するという方法は、私には効果がありました。しかし、それでもテキスト履修が苦手なことに変わりはなく、結局すべての単位を取るのに丸2年かかってしまいました。
3.卒業論文
卒業論文は「法然の平等観」と決めていましたが、基礎的な知識が少ないので簡単にはいかず、指導教授の齊藤隆信先生に随分お世話になりました。しかも浄土コースではなく仏教コースを選んでいたので、法然や経典のことをほとんど知らずに卒業論文に取り組むことになりました。これではいけないと気づいて、浄土コースのスクーリングも受けることにしました。学習の大変な講座もありました。経典の書き下し文を作成するというものです。漢文は高校以来でやっていないので、どうすればいいのか途方に暮れました。漢字もこんな漢字があるのかという、今まで見たこともないようなものが使われていて、ますます腰が引けてしまいました。仏教辞典と電子辞書、浄土宗聖典をそばにおいて進めていきましたが、訳文も含めて3週間位かかってしまいました。でも時間をかけただけ達成感があり、多少は漢文に慣れたかなと感じました。
卒業論文では章立てが一番重要だと思います。これが決まれば書き進むことができます。私は先生の指導で章立てを決めましたが、同時に基本的な文献の紹介や本の紹介もしていただきました。多くの本をやみくもに読むよりも、重要なものを読みこなすほうがいいのではないかと思います。結局私の場合は、齊藤先生との面談は、 7回にも及びました。今は、本当によくおつきあいしていただいたと深く感謝しています。メールによる指導もありますが、やはり直接会って話すことにより、先生の一言からヒントを得ることが多々あります。行き詰まったり、どうしても先に進めない時は先生に会って指導を受けるというのが卒業論文完成への道だと思います。つまり、それだけ卒業論文作成というのは、大変な学習であるということなのです。先生の指導なくして卒業論文はできない、というのが私の率直な感想です。
4.さらに学ぶ
2014年9月に卒業しましたが、卒業を前に私はもう少し学習を続けたいと思っていました。それで仏教学部に入学できないかと大学に問い合わせたところ、単位の関係でそれはできないと断られました。その時に、齊藤先生から大学院進学という道があると教えられました。過去の試験問題は難しそうでしたが、しかしこの方法しかないということで、受験のための学習の方法を指導していただき、さっそく取りかかりました。結局『仏教学概論』と『浄土学概論』というテキスト履修の教科書を、最初から読み直してまとめるという方法をとりました。この方法が大きな力になったと思います。幸いにも試験に合格し、4月から再び学生の生活に戻ります。今は喜びと不安と半々の気持ちです。
5.共に学ぶ
私の学生生活を最も身近で見聞きしていた夫が、影響を受けて佛教大学に入学しました。会話が乏しくなりかけていた夫婦に、新しい話題が提供されるようになり、以前よりも話し合うことが増えました。人生の後半で、夫婦が共に学生生活を送れるなんて考えてもみませんでした。二人とも卒業に至るまで簡単な道ではないと思いますが、お互いに励ましあいながら最後までやりとげたいと考えています。
~プロフィール~
2011年4月 佛教大学文学部人文学科浄土・仏教コース3年次編入学
2014年9月 同卒業
(佛大通信2015年5月号より)