通信教育クロストーク

2015年10月30日
カメムシの話

「学部長の手帖から」
社会福祉学部長  渡邉 保博

 以前,必要があって読んだ児童書~谷本雄治『いたずらカメムシはゆかいな友だち』くもん出版(2006,電子版2013)~の話である。

 カメムシ。ご存知のように亀のような形で色は緑。茶色もいる。集団で冬を越す。えさは植物の茎や実,種の汁。肉食(他の虫の体液を吸って生きる)もいる。アメンボ,タガメ,ミズカマキリ,セミはカメムシの仲間。おならをするくさい虫として「へこきむし」「へっぴりむし」「へくさむし」「くさくさむし」などと呼ばれている。臭いの元はアルデヒドという物質で,同じビンの中にアリを入れておくと,そのアリをやっつけるほどの威力があるそうだ。

 世界に3500種,日本に700種。色・形・習性はいろいろ。美しい色やデザインのカメムシもたくさんいる。1986年にはじまった「昆虫シリーズ」の切手15種類の第1シリーズに,オオクワガタなどと一緒にアカスジキンカメムシが描かれているという。写真をみると,緑色で形は東京ドーム型,玉虫のようにキラキラした殻にピンクのような赤い筋がいくつも入っていて,ブローチになりそうだ。

 食用にもなる。中国,ラオス,タイ,メキシコ,南アフリカなどでは,油でいためたり細かく刻んだりして食べているという。谷本氏が油でいためて食べてみたら,ピーナツのようでおいしいカメムシもあったし,ひどい味のカメムシもあったそうだ。「カメムシ」「食用」でWeb検索すると,試食の体験談やレシピが載っている。

 鳴くのもいる。ホソコバネナガカメムシは「チチチチ,タタタタタタ」と鳴く。子育てもしっかりする。ハチ・ハエ・アリなどカメムシを襲う虫は多いが,背中にハート模様があるエサキモンキツノカメムシの母親は,ハチが襲ってくると背中の向きを変えて卵に近づけないようにし,臭いにおいを出し,羽を震わして追い払う。

 変装の名人もいる。アリにそっくりなホソヘリカメムシは,アリに似ることでアリの攻撃から身を守る。ただ,成長するとアリより大きくなってしまいアリのマネはできないので,羽を広げてハチのふりをして,敵から自分を守ろうとする。

 作物を荒らすカメムシもいる。果樹を加害する果樹カメムシ(総称)は,柿・みかん・リンゴ・梨・さくらんぼなどの汁を,針のような口で吸って飲む。しかし、ナス・ピーマン・きゅうりにつく害虫を退治してくれるヒメハナカメムシなどもいて,農薬を使わずに野菜を育てることができる。

 著者の谷本氏も,はじめは「臭いだけの虫」と思っていたが,カメムシを観察したり,飼っていくうちに,「ずいぶん誤解されているな」「こんなにも楽しいやつだったのか」「知れば知るほど,かわいい,いたずらもするけど憎めない虫だ」と思うようになったという。この本の最後には,「カメムシたちと,友だちになるのもいいですよ」とも書いてある。

 私も,カメムシを好きになれるかもしれないと思った。そして,相手をよく知ることの大切さを再認識した。

(佛大通信2015年9月号より)

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