佛教大学通信教育課程

通信教育クロストーク

2017年04月25日
大貫挙学研究室(現代社会学科)

「学びのサプリ」
社会学部 現代社会学科 准教授 大貫 挙学(おおぬき たかみち)

社会の窮屈さ、世の中の息苦しさに関心があった

 中学、高校の頃は新聞の切り抜きが趣味でした。とくに社会面に興味があって、裁判の傍聴にも行っていました。学校をさぼって行ったこともあって(笑)、事件現場を巡ったりしていたことが、今の犯罪社会学の研究にかなりつながっているはずです。
 本を読むことも好きでした。人付き合いが苦手だったこともあり、今よりもたくさん読んでいて、小説なら多い時で一日5、6 冊は読んでいたこともあります。高校生ぐらいで社会科学書を読むようになりました。当時はフェミニズム理論が盛り上がりを見せていた時期で、研究者たちが世に問うだけでなく、一般メディアも大きく取り上げていたので、関心をもつようになりました。私の関心の一つは、性別を含めて、特定の役割に押し込められていくことの窮屈さなのです。当時、フェミニストの人たちが議論していることと、自分の関心がそこで重なったのだと思います。
 今も、社会や世の中の息苦しさ、窮屈さというものを言語化したり、問い直したりすることに関心があります。これまで死刑廃止運動や、冤罪の被告人の支援、あるいは加害者となってしまった人の支援にも関わってきましたが、これも今ある社会を当たり前のものとして受け入れていくのではなく、社会自体を問い直したいからです。

迷ったときには理論に立ち返る研究スタイルを重視

 大学は法学部に進みました。法学部では、出席がさほど厳しくなく、自分の自由な時間を作ることができました。その時間に、裁判の傍聴など、自分なりのフィールドワークや、読書をしていました。大学入学時点では、学問分野の区別はあまり意識していませんでしたが、徐々に社会学を専門にしたいと考えるようになりました。とはいえ現在でも、制度的な学問領域の内部に閉じこもりたくないと思っています。
 大学院の指導教員は家族社会学がご専門の先生で、先生と私の研究テーマが一致しているわけではありませんでした。先生にしてみれば、訳のわからない学生が入って来たなという感じだったと思うのですが、放任主義な先生だったので、したいことを自由にのびのびとさせてくれました。修士論文のテーマは、マルクス主義フェミニズム理論を批判的に検討するものでした。
 私の研究スタイルとしては、理論の比重が大きいです。迷ったときには、理論や理念に立ち返ることを比較的重視しています。理論を研究するということは、社会についてのイメージを作り出すこと。研究対象であるテキストの内容を「正しく」「忠実」に明らかにすることがいい研究だと考える人もいますし、それも大事だと思いますが、私は、ときに著者の意図を超えた解釈であったとしても、自分なりの社会観を提示することを重視しています。

社会が作り上げた「私」とは?主体化のメカニズムを探る

 社会学理論では、よく「主体化」がキーワードになります。主体とは社会が作り上げたものであるというのが、現在では一般的な見解ですが、その主体化のメカニズムについて、アメリカの哲学者であるジュディス・バトラーや、フランスの哲学者であるミシェル・フーコーなどの議論を手掛かりに、検討を進めています。社会が主体を作るとはどういうことか? 自分が自分であることは、世の中の仕組みから独立したことではありません。成育歴や人間関係、時代状況、文化的な意味づけの中で、「私」というものが作られていきます。理論的に詰めていくと、もっとその先にも考えなくてはいけないことがたくさんありますので、それらをめぐって、いろいろと研究しています。
 社会学理論、ジェンダー論、犯罪社会学についての私の研究に共通しているのは、この主体というものがどう作られているのかということ。たとえば犯罪社会学では、被告人は責任のある主体として、どういう論理で裁かれていくのか。また、ジェンダー論の研究者は、「女らしさ」「男らしさ」は社会の仕組みの中で作られたということを前提にしていると思いますが、私は性別というものに本質はないのだという立場をかなり徹底して強調しています。そもそも人間を男と女の二つに分類しようということ自体が、私たちの社会の価値基準によるもの。主体化や、人間を分類することの暴力への関心が、私のどの研究テーマにも多かれ少なかれ背後にあります。今の社会を批判的に問い続けることが、私にとっても、社会学にとっても大事なことだと考えています。

[経歴]
1973 年、神奈川県生まれ。
慶應義塾大学大学院社会学研究科社会学専攻博士課程単位取得退学。博士(社会学)。
東洋大学、慶應義塾大学非常勤講師などを経て現職。

(佛大通信2017年4月号より)

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