通信教育クロストーク

2015年10月23日
青砥弘幸研究室(教育学科)

「研究室訪問」
教育学部 教育学科 講師  青砥 弘幸(あおと ひろゆき)


教育における笑いやユーモアの意味を追究する

 本学の教育学科で講師を勤めるようになって2年。教育学の中でも国語が専門で、特に研究テーマとしているのは、笑いやユーモアと教育との関係です。笑いやユーモアと言っても、決して面白おかしく授業することを目指すということではなく、教育の中におけるその意味や意義、可能性や危険性を主に4つの視点から考察することで、それによる「理想的な」あり方を模索していくことを目指しています。
 その1つ目は、笑いとその「教室」の関係性や雰囲気などとの関連についてです。笑いが先生と子ども、子ども同士の関係にどのように影響を与えるのか、全ての子どもたちにとって居心地の良い「教室」であるために、そこでの笑いはどうあるべきかなどということです。また、2つ目は、授業方略としての意味で、例えば、授業にどのように笑いを取り入れることで子どもたちの学びの効果をもっとも高めることができるのかということ。さらに、3つ目は、教材としての「笑い」(例えば落語やとんち話など)にはどのような可能性が秘められているのかということ。そして4つ目が、学校教育の中で子どもたちの笑いに関する態度や感性をどのように育てるか、その目標や方法についてです。いずれも、日本の教育では、近年ようやく研究され始めた新しいテーマだけに、研究する上では難しい点も多々あります

ユーモア研究の先進国カナダへの旅

 私は教師になろうとの思いから大学は教育学部に入学し、大学院へと進みました。学部生の頃から、笑いに興味があり、学園祭のお笑いコンテストに出場するなどしていました。そして、「笑いの取れる人気者の先生になろう」などと、今から考えると浅はかな思いで教育と笑いに関する研究を始めました。研究を進める中で、笑いが人間の社会生活の中においてもつ意味の大きさを知り、大学院では、笑いと教育についてより深く研究を進めることにしました。その頃、笑いという現象は、教育学の学術的な研究対象として十分には市民権を得ておらず、専門に研究されている先生もいませんでした。この「笑いなど研究に値するものではない」という風潮の中で、指導教官の先生は私の思いを尊重し、研究を応援してくださいました。この先生との出会いがなければ今の私はいないと思います。
 日本は、教育と笑いに関する研究では欧米などに比べて大きく遅れています。私が院生の当時、海外での研究知見は今のように日本で簡単に手に入れることが難しかったため、カナダのオンタリオ州の大学に直接出向き、そこで数力月間資料の収集を続けました。毎日、関連資料を片っ端から集めたため大変な重量となり、帰国の空港において不審がられて荷物を確認されたほど。ここで集めた資料を用いながら博士論文を書き、無事、大学院の課程を修了しました。

教育現場での経験を経て、さらに研究を重ねる毎日

 大学院での学びを終えた私は、教員として小・中学校、高校という教育の現場で実際に子どもたちと笑いについて考えるような授業も行いました。例えば、子どもたちとニュースを見て、ニュースキャスターがどんな種類のニュースの時にユーモアを入れるのか(入れないのか)、それはなぜかなどを考えるような取り組みを行いました。このような活動を通して、笑いの可能性や危険性を理解し、生活の中で笑いをよりよく判断・活用する力を育てることが重要だと考えています。
 教育現場での経験を経て私は本学の講師となり、現在も笑いやユーモアと教育について研究し、先生を目指す学生たちを指導するに至りました。この誌面のテーマは「わたしの学び」というものですが、私の研究法は、とにかく「笑い」と名の付くものは片っ端から読んでいきます。また、専門領域の枠組みにとらわれず、社会学や心理学など他分野で笑いについて研究している先生方とも積極的交流をもつということでしょうか。そういうことで、笑いという現象がさらに立体的に見え、私が求める笑いの本質がより確かなものとして浮かび上がってくるのです。


経歴
1981年(昭和56)岡山県生まれ。広島大学卒業、広島大学大学院教育学研究科修士課程修了、同博士課程修了。博士(教育学)。小学校、中学校講師、就実大学専任講師を経て、2014年(平成24)より佛教大学専任講師。博士論文の題目は「国語科教育改善のための「教育ユーモア」研究」(2011)。

(佛大通信2015年8月号より)

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