通信教育クロストーク

2019年03月27日
独自のブランディングで手仕事の素晴らしさを未来へとつなぐ。

KYOTO TIME TRAVEL
伝統をつなぐ・未来をつくる・京都をめぐる

丹後ちりめんの産地、京都府丹後発のブランド「KUSKA(クスカ)」。2018年には、京都市中京区の錦市場商店街のすぐ近くに旗艦店「KUSKA SHOP」がオープンした。今回は、社会福祉学科の藤松先生がショップを訪ね、ブランドの仕掛け人である楠 泰彦さんにお話を伺った。

KUSKA
1936年、初代・楠博行氏が京都・丹後にて丹後ちりめんの製織・販売業を開始。2010年に3代目となる現社長・楠 泰彦氏が、作り手の思いの詰まった商品が作りたいと、あえて手織りに特化し、「伝統」「ファッション」「芸術」の3つの融合をコンセプトに新しいラインとしてKUSKAを立ち上げる。2013年、フランス・若手デザイナーズブランドとコラボし、フィレンツェで開催のPITTI IMMAGINE UOMO に初出展するなど、日本の手仕事の魅力を世界へ発信している。

楠 泰彦(くすのき やすひこ)
クスカ株式会社代表取締役。京都府の丹後ちりめん製造・販売業を営む家に、次男として生まれる。中学・高校は高知県の明徳義塾で野球部員として活躍。その後、東京の建設会社に就職。30歳を期に丹後に戻り、自社で1年間、織物を修行。32歳で代表取締役に就任。ブランド「KUSKA」を立ち上げる。

藤松 素子(ふじまつ もとこ)
社会福祉学部社会福祉学科教授。立命館大学産業社会学部卒業、同大学大学院社会学研究科博士課程修了。専門分野は社会福祉理論、地域福祉論。子どもから高齢者までの生涯にわたる「発達」を保障していく観点から、援助が必要な人たちやその関係者の「人権」を守り、そこに関わる専門職の「人権」を守るために何が必要なのかを考え、実践。主な著書に『社会福祉実習 現場とともに歩む社会福祉士をめざして』(共著、高菅出版、2011)、『福祉論研究の地平:論点と再構築』(共著、法律文化社、2012)など。

一歩足を踏み入れると、丹後の海や風を感じるような空間「KUSKA SHOP」。対談は、楠さんが家業を継ぐことになった経緯からはじまった。

素材である糸からデザインできる強み

藤松:この店舗は、いつオープンされたのですか。

楠:2018年の5月ですね。2015年12月に三条烏丸に店舗を構えてから2年と数カ月経って、ちょうどいい場所に物件があったので、ここに移転しました。

藤松:楠さんは、もともと東京で違うお仕事をされていたそうですが、丹後に戻られたのは、どんな理由からですか。

楠:私は18歳からサーフィンをしてきたのですが、丹後の海でもサーフィンをできることを知りまして、家業が続いていることだし、サーフィンしながら家業もやってみようかなと思いました。丹後ちりめんには300年の歴史があり、モノづくりの技術がしっかりと受け継がれてきた環境がありますし、廃業するのではなくて、形を変えて違う見せ方ができないかということで、はじめることにしました。

藤松:丹後ちりめんでネクタイを作ろうと思ったのは、なぜだったのですか。

楠:男性が身に付けやすいものを作ろうということと、ネクタイって男性のファッションの一番のポイントになるので、美しさを一番表現できるからですね。

藤松:KUSKAブランドの一番のセールスポイントは何ですか。

楠:まず、クオリティ。光沢と質感ですね。

藤松:陰影がきれいですよね。

楠:立体的に織っていて、3次元の織物を表現しています。

藤松:手で織るのですね。

楠:もともと弊社は丹後ちりめんを機械で織っていました。技術的には手織りよりも楽なのですが、大量生産・大量消費ではないものを作っていこうと、機械の織機は全部廃棄して、手織り機を入れました。丹後ちりめんの技術をその中に取り入れることで、クオリティや質感はよくなっているということです。

藤松:デザインも、皆さんで考えておられるんですか。

楠:基本的にそうです。色合わせや織りがメインになるのですが、なるべく素材自体にデザインを入れて、表面的ではなく本質的なデザインをしていこうとです。

藤松:本質的デザインとは、どういうことですか。

楠:デザイナーはだいたいイメージからデッサンして、ある生地を形にしていきますが、我々は糸1本1本の素材とか、どういう原料を使えば美しい織りになるか、どう染めるかなど、素材自体からデザインしています。その素材を組み立てて織物にしていくので、本質的な素材にデザインが入っているということですね。なるべくベーシックな表情で素材のよさを出しています。

丹後は日本における絹織物の最大の生産地。白生地の反物を京都の室町や西陣に卸して、そこで最高級の着物へと仕上げられて人々の手へと渡って行くのが一般的な流通形態である。しかし、KUSKAでは製造から流通までを一貫して行うことで、独自のブランディングを展開している。

「作る」特徴を興味ある人に伝え続ける

藤松:手織りとなると、生産量は限られますね。

楠:はい、1日に1人の職人が2本から3本しか織れません。うちは10人の職人さんと20台近くの手織り機がありますが、2010年にはじめたときは1人の職人と1台の手織り機でした。そこからなんとか、ブランディングという手法を使いながら、地道な活動で少しずつ販路を広げてきたというところですね。ちょうどインターネットやHP、SNS、通販を使える時期になってきていて、土地によっての情報の格差というものが無くなってきたので、ちゃんとプロモーションというか、伝えるというところにフォーカスできたのかなということ。我々の強みは「作る」というところなので、そこを興味のあるお客様にしっかり伝えて行くことを地道に広げてきました。

藤松:お客様は、全国的にはどこが多いですか。

楠:東京都内ですね。小売店で販売するのと、自社で販売するのと2通りあるのですが、小売店への卸は8割方が東京です。ビジネスマンが多いということもありますが、人の前に立たれる機会が多い政治家の方であるとか、これを着けることによって自分のモチベーションが上がったりする方が多いですね。あとはギフト。大切な方にはストーリーがあるものをお渡しするという。ストーリーを伝えることも我々の一つの仕事ですし。

藤松:作る側のモチベーションも変わるでしょうね。

楠:それもありますね。地元丹後の職人の方々と店舗を視察して、実際にお客様が購入されるのを直にみたりして。それがモチベーションにもなります。お客様も動画や工房見学、このショップでの体験などを通じて、作り手がどのように作っているのかもわかりますし、そういったことも魅力にして、ブランド展開していきたいなと思っています。

イタリアのトレードショーへの出展や、海外メーカーとのコラボレーションなど、多面的なアプローチでブランドの可能性を広げているKUSKA。今後のさらなる展開は?

丹後の「いいもの」をメディア発信

藤松:色々なメーカーとのコラボ商品もあるのですね。

楠:はい、2013年にはフランスの若手デザイナーとコラボをしたり、2016年からはイタリア・フィレンツェで開催される、ピッティ・ウォモといって世界でも一番大きいメンズアパレルの展示会に出展し続けています。世界中から1000ブランド、3万人が集まる中、KUSKAのブースを設けてバイヤーと商談しました。

藤松:評判はどうでしたか。

楠:クオリティがいいので、評価はよかったです。ただ、関税や送料などで日本よりも値段が高くなってしまうので、そのあたりをうまく調整すれば販売できるかなと。あと一押し、二押しぐらいでいけるかなというところです。特にイタリアはファッション大国なので、いいものはきちんと評価してくれます。どこにでもあるようなものなら、彼らが作る物にはかなわないですしね。会場では、機織りの動画も流したのですが、海外バイヤーは着物の織りの技法で織っていることに、すごくびっくりしていましたね。着物の織物の文化というのは、かなりハイクオリティなので、あとはそのクオリティを落とさずに、どう表現するか。素材からしっかりと作り込んで、お客様にしっかり伝えられることが我々の強みですし、300年間ずっと続いてきた丹後ちりめんの伝統が一番の強みだと思っています。

藤松:これからまた新たな取り組みも考えておられますか。

楠:はい、2010年からKUSKAを立ち上げて丸8年が経ち、徐々にですが色々な方々に知っていただけるようになりました。また工房では、職人さんや手織り機、そして生産量も増やしています。この8年間で培ったKUSKAのブランディングの経験を地元「丹後」に活かせないかと考え、昨年4月にTHE TANGO(ザ・タンゴ)というWEBメディアを立ち上げました。内容は海・食・伝統の3つをテーマに、丹後で活躍されている方のコラムやこだわったモノづくりやサービスをされている方々のレポート記事などを月に5本程度サイト上に掲載しています。ちなみにサーフィンの動画や記事もあります。これまでの着物や織物だけじゃなく、丹後の色々な人やものを発信することで、より多くの方に地元を知ってもらうことが重要です。そのうえで、いいか悪いかはお客様が判断して下さると思いますので、まずはこのWEBメディア(http://thetango.kyoto/)でKUSKAのフィルターから見た丹後を知ってもらう、その土壌を作っていきたいですね。

藤松:今日は素敵な商品も見せていただいて、ありがとうございました。

(佛大通信2019年3月号より)

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