通信教育クロストーク

2019年03月05日
学習体験記 日本文学科卒業生(N.Iさん)

 初めて『佛大通信』を手にした時から、この「私の学習体験記」を毎号楽しみに読んできた。このたび、この文章を書かせて頂く栄に浴し、少しでも読者の参考になるように、2年間の反省点と良かった点とを挙げたいと思う。

反省点

 最初に失敗したことは、入学式に出られなかったことである。
 当初、ぼんやりと「どうせなら入学式に出席したいなあ」と考えていたのだが健康診断や卒業証明書を手に入れるのに思ったより時間がかかり、入学式どころか二次申込み締切直前にやっと申し込むことができた。
 振り返ってみると、このなにごともギリギリにならないと取りかからないという性格が災いし、このあとの通信生生活でも自分で自分の首を締めることが多かったように思う。
 例えばテキスト履修がその最たるもので、厚いテキストを開くのが億劫で何か月もそのままにしておいた。そのせいで、卒業間近の最終試験は何教科も受けなければならなくなった。
 そもそも、当初は履修の方法そのものがよく理解できず、あらかじめ履修の登録をするものと思い込んで、わからないまま時間を無駄にしてしまった。
 ようやく、問い合わせ専用の電話にかけて「個々に必要な教科のなかから選択してリポートを提出→科目最終試験」という流れを知ったのは、入学から半年以上も経ってからであった。
 一方、大学には日帰りで通える範囲に住んでいるので、スクーリングの方の単位は順調に取得できていた。授業はどれも楽しく知的好奇心を満たすものであった。有難いことに課題のリポートも比較的良い成績を頂いた。
 ここでの更なる失敗は、スクーリングのリポートと同じように、テキスト履修のリポートも簡単に書けるだろうと高を括っていたことである。
 その結果、最初のテキスト履修のリポートは引用ばかりのひどい文章で不合格であった。それならばと、次は持論を延々と書き、再びDの判定が帰って来た。そう、私は要約というものがなんたるかを知らなかったのである。
 思い余って「リポートの書き方学習会」に参加したのは2年目の春であった。これは、『佛大通信』誌上にも再録されるので参照されたい。
 この講座は目から鱗の内容ばかりで、自分が通信の学びかたの基礎を全く理解していなかったと思い知ることになった。
 不思議と受講ののちは、初めて開くテキストに臆することもなくなり、要点をまとめつつ読み進め、そうなると内容が理解できるので、テキスト履修そのものが苦でなくなった。
 あとひとつ、最後の大きな失敗は、卒業論文に取りかかるのが遅かったことである。実際は卒業論文には興味があり、漠然としたテーマを元に、早くから大学に行くたび図書館にも寄り、資料を集めていた。
 この時点で私の犯した間違いは「卒業論文準備=資料探し」と思い込んでいたことである。
 のちに、指導教員である加藤邦彦先生から
 「卒業論文は資料を集めること、と勘違いしている人が多いですが、まずは自分の頭で考えてください。テーマに添い、まず自分はどう考えるかという、自説をはっきりさせて下さい。極論を言えば、資料なんて要らないんです」
 と言っていただき、私は自分が無駄な時間を費やしてきたことを知った。一旦全ての資料を捨てて、考えることから始めたのは、卒業の年の夏を過ぎてからであった。
 このように振り返ってみると、総じて邪魔をしたのは時間の管理能力の無さと先入観である。経験というものは諸刃の剣で、長く生きていると有用な知識も増えるが、自分でも知らず知らずのうちに変な思い込みが生じがちである。先入観を捨て、素直な気持ちで向き合うことの難しさを身をもって知る経験であった。

良かった点

 なかには、我ながら良かったと思われることもある。
 最初に、良かったというより恵まれていたことは、周囲の理解があったことだ。通学に2時間近くかかったので、家族がそれぞれに家事を分担して、早朝から遅くまでスクーリングに出掛ける私のサポートをしてくれた。
 また、期間雇用社員として働いている職場の上司に、許可と協力を求めたときは「こんな歳になって大学行ってどうするの?」という反応を想像していたのだが、「勉強したいんでしょう?僕も働きながら夜間の大学を出たからわかるよ」と快諾をいただいたことは嬉しい驚きであった。単純に休みが取りやすくなったこともそうだが、その後もこの言葉は随分励みになった。
 あとは、できるだけ「講座」「通信教育課程主催のイベント」には参加したことである。
 まずは入学前に「説明会」に参加して、「入学しても何割かの人は何も手をつけずに終わってしまう」「3年に編入した場合、2年間といっても実質の履修期間は1年半しかない」という説明を受けた。厳しい現実を突きつけられる内容だったが、だからこそ「2年間で必ず卒業する」と決心することができたと思う。
 前記のとおり、「リポートの書き方学習会」に出るのは遅くて失敗したが、「卒業論文の書き方学習会」に出たことは役に立った。
 この時の参考文献として紹介されたものの中から、戸田山和久著『論文の教室』を購入したが、卒業論文執筆の際は、最初から最後までずいぶんお世話になった。
 そしてなんと言っても良かったことは、たくさんの出会いがあったことである。
 スクーリングでは、熱心な講師陣による講義を夢中で聞いた。当然なのかもしれないが、大学の講義とはある人が長い時間をかけて研究してきた成果を、本人の口から直接享受することができる幸福な体験である。
 それでも講義が今ひとつ理解できない時は、近くの席の方々とお互いのノートを突き合わせて内容の確認をした。その結果、若い友人もでき、色々相談をしたり教えてもらったりする関係も作れた。
 私は悩んで悩んで、48歳の時に通信制大学で学ぶことを選んだ。費用も時間も問題はたくさんあったが、「人は今日の日が一番若い」思い切って一歩を踏み出して本当に良かったと今は思っている。

~プロフィール~
2015年4月 佛教大学文学部日本文学科3年次編入学
2017年3月 同卒業

(佛大通信2019年2月号より)

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