通信教育クロストーク

2019年02月16日
朴光駿研究室(社会福祉学科)

「学びのサプリ」
社会福祉学部 社会福祉学科 教授 朴 光駿(パク クヮンジュン)


27 歳で初めて日本語を学び、文科省の招聘で日本留学

 私は「東洋のナポリ」とも称される美しい港町・統営(トンヨン)に生まれ、釜山で育ちました。社会福祉に興味があったので、釜山大学法学部内に設置されていた社会福祉学科に進学。修士課程修了後に助手になりましたが、留学も経験したかったので、英語と日本語のテストのみだった日本の文部省(現:文科省)の国費招聘制度への挑戦を決意。日本語はゼロからのスタートで、準備期間も半年しかありませんでしたが日本語漬けの日々を送り、合格しました。

 研究テーマに合う大学は文部省がアレンジするのですが、釜山大学の恩師に相談したところ「佛教大学に行きなさい」と。戦後日本の社会福祉に多大な影響を与えた孝橋正一先生はじめ、岸勇先生、柴田善守先生、上田千秋先生が在籍しておられることがその理由でした。恩師には「博士論文書いて早く帰って来なさい」と言われました(笑)。

 1987年4月1日に来日。佛教大学キャンパスのコンパクトさには驚きましたが、浄土宗の僧侶のための浄山学寮(清浄華院内)に特別に住まわせてもらうなど厚遇していただき、研究に打ち込む3年間を過ごしました。

 帰国年から釜山女子大学(現・新羅大学)の教員になりました。それ以降も交流をしていた佛教大学元副学長の中村永司先生から「佛教大学で教鞭を執らないか」と誘われました。韓国でも10年以上勤めたし、家族も賛成してくれたので、2002年再び日本に行く事を決めました。

英国で研究テーマを深めた後 東アジアの福祉に注視

 当時の私のテーマはヨーロッパを中心とした福祉思想史。19世紀末イギリスの「フェビアン社会主義」を主に研究していました。佛教大学留学中、イギリスにも滞在。1911年に来日されたこともあるウェッブ夫妻がその設立に関わったLSE大学の図書館では、未出版の日記や手紙を書写しました。学内の書店にある古書販売コーナーでは、貴重な本も購入しました。夫妻が自転車で走った街や結婚式を挙げた労働会館を見学するなど、空気を感じるという貴重な経験をすることができ、それは博士論文の作成にも大変役立ちました。

 1999年に沖縄で開かれた東アジア国際シンポジウム(沖縄+東アジア5か国)で、韓国側の報告者として参加した際に、東アジア各地の研究者と交流ができたことは大きな経験でした。子どもの頃から『史記』や『十八史略』などを読み、漢文学にも親しんでいたので、東アジア福祉の比較研究も面白そうで興味がありました。加えてその後、大学院生20名を引率して上海・北京に行き、復旦大学で中国の人口問題に関する講義を受けたり、福祉施設見学をしたりしたことも、東アジアへの関心を高めました。

 中国社会科学院(北京)に手紙を出し、人口労働経済研究所との交流を始めたのは佛教大学に赴任した直後から。2008年から1年間は中国社会科学院の訪問学者として研究活動を行いました。研究は進みましたが、日本語が少し後退してしまいました(笑)。この交流は今も続いています。

互いの異質性を理解する それが文化というもの

 現在の主な研究テーマは、東アジアにおける高齢者社会政策の比較研究。日本は、江戸時代に起きたとされる勤勉革命の影響もあり、労働倫理が強力です。「働かざる者、食うべからず」ですね。韓国は、儒教の国家介入主義の影響もあり、国民を食べさせるのは国王や政治の仕事という思いが強い。生活保護などに対するスティグマは日本ほど強くはありません。中国は、約30年間社会主義を経験しましたが、伝統的には「貝の文化」も強かったので、今は完全な市場主義。

 朝鮮時代は長い間、朱子学根本主義が蔓延し、現在の韓国社会は「政治的社会」の典型になっています。大義のためなら経済が多少ダメになってもあまり気にしない風潮です。その点は経済を優先的に考え、柔軟に主張を変える日本人には理解しがたい点でしょう。そのような相異なる社会風潮の歴史的起源を探ること、それは東アジア社会福祉比較研究の大きな課題の1つです。

 多くの研究者は東アジアの文化的共通性を強調しますが、私は異質性を強調することを心がけています。異質性を理解することこそ、文化の理解、ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、東亜太平の出発点だとみています。韓国人は日本人ではないし中国人も、逆もまた然り。体で覚えた文化は、少しずつしか変わらないものです。

[経歴]
1958年韓国統営市生まれ。釜山大学大学院修士課程修了。
1987 ~ 1990年日本政府招聘国費外国人留学生として佛教大学大学院博士課程修了(社会学博士)。
1990 ~ 2001年新羅大学教員、2002年佛教大学助教授。
2003年より現職。社会福祉思想、東アジア高齢者社会政策比較研究が専門。
2008年度中国社会科学院訪問。
2015年4月~9月韓国・東国大学(ソウル)客員教授。

(佛大通信2018年12月号より)

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