通信教育クロストーク

2019年01月25日
学習体験記 公共政策学科卒業生(S.Aさん)

社会学部 公共政策学科 卒業生

入学の動機

 私が佛教大学通信教育課程に入学したのは69歳の時でした。妻が脳梗塞で倒れ、介護の必要から議員をリタイアしたあと、「なにかしなければ」と思ったことからです。もともと若い頃に立命館大学2部に入学したのですが、仕事などが忙しく1年で退学してしまいました。この若い頃にやり残した大学の勉強をもう一度やり遂げたいと思うようになり、入学したのです。

 立命館大学で1年間学んだことで2回生からの編入になり、当初の予定は「4年間で卒業する」つもりでしたが、4年半がかりで卒業することができました。

勉強の仕方-テキストを繰り返し学ぶ

 歳のせいもあって、本を読んでもなかなか頭に残らず、しかも長年、パソコンで文書を作ってきたことから、漢字が読めても書こうとすると正確に書けないというような状況でした。

 ですから、私の学習方法は、なによりも教材のテキストをしっかり学ぶということにしました。まずテキスト全部を読み、重要と思うことをノートに抜き書きしました。これによって、テキスト全体で何が書かれているのかを大づかみでき、しかもうろ覚えの漢字も書くことで、覚え直しができました。

 次に、設題に沿って必要な箇所をもういちど読み、場合によっては参考図書を読むということをしました。そしてリポートを仕上げました。リポートの書き方は最初の頃は、不適切な文脈への指摘を受けたこともありましたが、書いているうちに、主題に沿って書けるようになりました。

 試験の準備は、想定される問題にあわせて、テキストをもう一度読み直し、答案文例をパソコンで作成し、試験直前には、これを繰り返し読んで、覚えるようにしました。

 結果的には、一つの科目について、最初の通読、設題に沿った読み方、試験問題を想定しての学習と、箇所によっては3回ほど読むことになりました。

 しかし、こうした繰り返しての学習で理解ができ、自分の考えをまとめていく土台ができたと思っています。ただ、自分の興味の薄い一部の科目では、設題に関する箇所だけ読んだり、試験問題の関係するところだけ学習したり「手抜き」をしたものもあります。これは結果的に、その科目への理解が十分でないままとなり、あとになって後悔しています。

スクーリングで先生や若い人たちの交流は楽しみに

 スクーリングは少人数の授業(最少は2人)も多かったので、先生や他の受講者と意見を交換することで、自分の理解が浅いことに気づかされたり、違う角度からの問題意識を聞くことで、考えの幅が広がったりと、やはり一人でテキストを読んで学習するのとは違った刺激を受け、学習意欲を継続するのに力になりました。

 また、美山町や中京区で「地域おこし」などで頑張っておられる人たちから実際のとりくみを聞くことによって学ぶ機会があったことは、本当に有意義でした。ただ、この場合も自分の問題意識をはっきりさせ、「何を聞くか」など事前に整理しておくことが大事であることを学びました。

卒業論文の作成

 卒業論文の作成では、「テーマをどうするか?」で迷いました。私は地方自治体の経済政策に関心があり、地方都市や農山村の地域経済が疲弊している現状をどうするのかということで色々と考えましたが、指導いただいた的場先生から「もっと絞り込んだほうがいい」との指導も受けました。

 そして、迷った挙句、いま現実にすすめられている府内各自治体の「地方創生」について考察することにしました。

 資料集めでは、どこの自治体もホームページで「地方創生総合戦略」や「人口ビジョン」をアップしており、政府関係資料もそう苦労することなく集めることができました。また、新聞記事や先行研究なども、すでに関心を持っていた事もあり、手元に多くありました。問題は、これらの材料をどのように整理するかでした。集めた資料を読み、必要な箇所を抜き書きするのに相当な時間がかかりました。卒業論文は少し長くなりましたが、先生の了承を得ることができました。

 卒業論文の指導をしていただいた的場先生に『失われた20年と日本経済』(深尾京司著 日本経済新聞出版社)という本をもとに、読み方や関連する情報などを個人授業のように教えて頂き、私の初歩的な質問や意見にも丁寧に指導いただいたことは、本当に良い経験になり感謝しています。これからも「生涯勉強」の姿勢で通信教育を受けて学習している中で、あらためて「もっと早く勉強しておけばよかった」と思ったことがありましたが、反対に「これまで社会生活をしてきたことが、理解を深めさせてくれている」と感じることも多くありました。

 私は、若い頃に京都府の職員として働き、50歳を超えてからは京都府会議員としての仕事をしてきました。そこから、「地方自治とは?」ということを考えざるを得ませんでしたが、まとまった学習はできず、そのときどきの課題に合わせて、必要な本を読むなどしてきました。しかし、今回「公共政策学科」で学ぶことで、「公共政策とはそもそも何か」などその歴史や関連する事項を学ぶことができました。これからを学ぶことで、これまでの社会経験と合わさって理解が深まり、学習の楽しさ喜びを感じることができました。

 通信教育のおかげで若い頃にやり残した大学の勉強を終えることができました。そして的場先生からも「資本論を読んでは」と言われたことでもあって、若い頃に途中まで読んでは挫折をくりかえしていた「資本論全三部を読む」ことに、いま挑戦をしています。

 歳を経ることで、体力の衰えなど後退する部分もありますが、社会経験の蓄積によって物事を深く理解する力を蓄えることもできます。これを活かして、これからも学習に励んでいきたいと思っています。

~プロフィール~
1963年京都府職員、64年立命館大学2部入学(65年中退)、95年京都府会議員(16年間)。
2013年4月 佛教大学社会学部公共政策学科2年次編入
2017年9月 同卒業

(佛大通信2018年10月号より)

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