佛教大学通信教育課程

通信教育クロストーク

2017年06月17日
第1回 再発見!仏教美術の魅力

蓮華の力
─ストゥーパを飾る意味―

歴史学部歴史文化学科 安藤 佳香

 仏教美術は実に奥深い魅力をもっています。新発見には誰もが心躍りますが、よく知っているはずの作品であっても少し視点を変えることで、新たに拡がる世界の存在に気づく場合がしばしばあります。そんな「再発見」は美術史研究の醍醐味と言ってもいいでしょう。
 古代インドにおいて、仏舎利を祀ったストゥーパを囲む欄循【らんじゅん】には、夥しい数の浮彫が施されています。仏像が出現する以前から、ストゥーパを飾ることで仏教美術の歴史が始まっていました。浮彫には釈迦の生涯の象徴的な場面を表した仏伝や、釈迦の前世の物語であるジャータカはもちろん見られますが、もっとも数が多いのは蓮華とその関連文様なのです。例えばバールフット欄循(紀元前2世紀)では全体の八割近くを蓮華文が占め、しかも同じデザインの蓮華を見つけるのが困難なほど多様です。蓮華文の数の多さとその驚くべきヴァリエーションは何を意味しているのでしょうか。
 古代インドで蓮華は、仏教以前から聖なる華と考えられていました。さまざまな生命を生み出す創造の華、さらに光り輝く光明の華とされ、その属性に基づいて多くの造形が遺されました。ストゥーパの仏舎利を納めた本体部分(覆鉢部【ふくはちぶ】)も、当初は巨大な一輪の蓮華として表現されていたと考えられます。華の中心、台の部分に仏舎利が納められていることになります。そしてその周囲に浮遊するように無数の小さな蓮華が表されます。仏舎利のもつ無尽の力と創造の華・蓮華が重層し、仏舎利の力は巨大な蓮華が生み出す数えきれないほどの小さな蓮華によって、眼に見える形となったのです。生み出されたそれぞれの蓮華の創造力は、拡がる光の輪である同心円のなかに、植物や時には聖獣を配することで表現されました。ここにあげた例では象とナーガが表されています。象は鼻先に蓮華を巻き付け、右まわりに進みます。もう一方は多数のナーガを同一方向に並べることで、回転の動きが見えるようです。
 近頃完成した本学の礼拝堂(水谷幸正記念館)は、建物全体が蓮華の形をしています。ストゥーパの蓮華のように、これからの佛教大学の新たな創造の核となって豊かな人材を創出していくのではないでしょうか。

*図版はバールフット欄循浮彫装飾 コルカタ・インド博物館(撮影:安藤佳香)

(佛大通信2017年6月号より)

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