佛教大学通信教育課程

通信教育クロストーク

2017年02月27日
作田誠一郎研究室(現代社会学科)

「研究室訪問」
社会学部 現代社会学科 准教授 作田 誠一郎(さくた せいいちろう)


様々な経歴を活かして、社会学研究の世界へ

 私が専門とする社会学のジャンルに興味を持ち始めたきっかけは、私の少年時代にあるのかも知れません。当時は、「ツッパリ」や「暴走族」など社会的にも少年非行が注目されていた時代です。私にもやんちゃな友人がいましたが、良い友人で本当にそうなのかという思いが強く、そんな彼らの素行や周囲の声に興味を持ちました。
 やがて高校になると社会科の高校教員になりたいと、将来を夢みました。しかし、家庭事情もあり、警察官になりました。そこで、非行する少年や成人の犯罪と直接的に向き合うようになったのです。当時思ったのは、街には昼と夜の全く違う顔があるということ。昼中の街は主婦や子ども、そして学生たちがいる光景ですが、夜勤で夜中の街をみると、同じ街なのに酔っぱらったサラリーマンや、さらには怪しい雰囲気の人もいる、街の二面性を実感したのです。
 約2 年間を警察官で過ごしましたが、社会科教員への夢は持ち続け、大学へ進学し法学部で学び、友人のアドバイスで教員免許にも関わる教養科目の社会学を選択しました。私は、この学問に「面白い!」と大きな魅力を感じてのめり込み、大学院に進学して学びを深めるために専修の教員免許を取得したのですが、次に勤めたのは少年院の法務教官でした。少年院に入った少年たちと関わるうちに、非行は家庭環境や社会的な影響が大きいと感じ、高校の社会科教諭(非常勤)を経て再び研究の世界に進みました。

「少年非行」をメインテーマに3つの研究分野から社会学視点に立って多角的に研究

 私の研究は、警察官や少年院での職務経験が大きく影響していると思いますが、少年非行をあくまでも社会学の視点から研究し、分析するというものです。私は、少年非行を大きく(1)近代化を中心とした歴史的な流れ、(2)犯罪におけるメディア報道の関連性、(3)精神医療化における解釈、という3つの視点から総合的に考究してきました。
 たとえば、歴史的には、現代の非行と同様に戦前にも似通った非行現象が散見され、明治期以降の近代化などの社会環境の変化を中心に考察しています。メディアでは、戦前の新聞にも非行が何度もコラムなどで社会に伝えられていました。大局的にみると、過去も現在も非行は繰り返されているのが現実で、社会の関心が少年非行にクローズアップすることで社会問題化するのだといえます。そして、精神医療化ですが、現代は凶悪な犯罪を犯した少年には特に精神的な鑑定をとメディアを中心に問われますが、戦前期にもありました。特に戦時期は、断定的かつ一方的で、少しの疑いで精神の病気と見なして、強制的に収容することもありました。ただ、現在の鑑定基準でもその解釈は悩むところです。
 こうした3点からも、各時代や側面からみても非行は繰り返されており、様々な背景に気づきます。現在ではメディアが希少性や即時性を判断基準とし事件を大きく取り上げるので、非行は増えているように感じますが、むしろ少年院に収容される少年は減少しているのです。戦前の方が凶悪な少年事件が多かったと聞くと驚かれる方もいるでしょう。

現在の少年非行に焦点をあて社会学的にその実態を紐解く

 私はこうした流れを踏まえつつ、歴史的な資料の考察とともに今の中高校生などの対人調査を通して、現在の少年非行を深く掘り下げていく予定です。
 最近では子どもと大人の境界が薄れてフラット化し、いわゆる仲良し家族が増えているといわれます。以前は、親や地域等の厳しい大人が正しい方向へ子どもを喚起するような社会環境が多く存在しましたが、最近はその環境も衰退しつつあり、子どもも指導される機会が少なくなったため、社会規範がわかりづらい状況も、いじめや非行に繋がっているかもしれません。
 実際に社会調査を始めると、SNSなどで密に繋がっていても実は、孤独を感じている子どもが多いという結果も得ています。いじめっ子の心情にはいっぱいの孤独感があります。最近の若者は堅実で真面目であるといわれるように、本当に真面目です。だからこそ、対人や仲間内、家族の関係性で抱えるものをみる必要があります。
 このように、私の専門である少年非行では、あくまでも客観的に、多角的、複眼的な視点で考察するということが大切で、それが社会学の特徴であり、学ぶ魅力であると思います。
 通信教育課程の学生の皆さんは、年齢もキャリアも様々で、スクーリングで逆にお話を聞いても面白いと感じることが多いです。社会学を学ぶ際には、固定概念で決めつけるのではなく、どのようなテーマであっても、あくまでも、多面的に学際的に事象をとらえる柔らかさを大切にしてください。

[経歴]
山口大学大学院東アジア研究科博士課程修了。博士(学術)。
山梨学院短期大学専任講師、同大学准教授を経て現職。

(佛大通信2017年2月号より)

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