通信教育クロストーク

2017年01月23日
二澤善紀研究室(教育学科)

「研究室訪問」
教育学部 教育学科 講師 二澤 善紀(にさわ よしき)


数多くの人との出会いが、私を数学教員から研究者の道へと導きました

 私は、小学校、中学校と高校の数学科の教員免許状取得を目指す学生を対象に教えています。専門は数学教育で、小中高連携を意識した算数・数学の授業研究、関数概念の認識に関する研究などを中心に進めています。
 もともと私は数学教育の研究職を目的に今日に至ったのではありません。以前は、中高一貫校の教員として学校現場にいました。また私が高1の時は数学が得意とはいえない状況でした。しかし、「数学は簡単だ」という友人の一言で数学の学習への意識が大きく変わりました。
 数学が「面白い」になったのはその頃で、本屋で偶然に手にとったブルーバックスや数学者が書いた本を読んで、問題集の問題を解くことだけが数学じゃないと考えるようになったのです。
 数学科教員を目指すきっかけは、大学院のゼミの先生が、教員になった卒業生が参加できるよう土曜日の午後にゼミを設定しておられ、そこで実際に指導主事をされていた先輩に出会ったことです。先輩は「学校には数学の専門性の高い先生が必要だし、ずっと数学に関わることができる。子どもたちに数学の面白さを伝え、数学の力を伸ばしてもらいたい。」と熱く語られました。これ以降、数学の教員を目指していきました。大学では数学研究が中心で数学教育の研究はしていなかったのですが、教員となり数学教育に携ってから京都教育大学大学院で数学教育史や数学教育研究の文献を輪読する場に参加し、多くの人と議論する機会に恵まれました。そうした人たちとの出会いによって、私の数学教育研究への熱意が高まっていきました。

あくまでも児童生徒が主体、「なぜ?」という好奇心を学びの意欲へと育みます

 児童生徒が算数・数学に興味をもつには、「なぜ?」「不思議だな!」「面白い!」などという好奇心を喚起させるのが一番です。そのためにも、私は小中高の先生を目指す学生に対して、算数・数学を楽しく学ぶ体験型の指導法も取り入れています。例えば、1枚の展開図から自動車の模型を作ることを通して、面白さや考える(創造する)楽しさを体験しながら、立体図形の意味や性質についての感覚を豊かにすることを伝えています。
 数学の学習は、公式を丸暗記して手続きのように解く方法では、学習内容を理解する、それを活用することが困難になります。また、断片的な知識となるため、すぐに忘れたり、児童生徒が次の段階の学びでつまずく可能性が高くなります。現在では児童生徒の主体的な学びや能動的な学びを強く意識するようになっており、活用力の育成が求められています。そのため、考えたことや学んだことをアウトプットする事が重要視されています。例えば、まず問題場面を理解してあるいは理解するためにグループで話し合い、次に自分で考え、それをお互いに発表し考察を深めてまとめるなどです。考えたことや学んだことをアウトプットする事で、学習内容の意味を理解し、他の知識と関連づけることで体系的・構造的な理解につながり、数学を主体的に学ぶ姿勢や活用力の育成につながります。このように導いていく教員の指導が、子どもたちの算数・数学への理解には重要です。

より理想的でスムーズなステップアップを図る教育スタイルを追究します

 近年、注目される小中一貫、中高一貫などの教育システムの考えのベースになるのが、子どもたちの将来へ向けた見通しを立てた教育の必要性です。そういう意味で小学校や中学校・高校の数学の先生は、それぞれの学びの段階に合わせつつ、全体を見通した教育プランを考える必要があります。私は、小・中・高の学びの壁をなくして、よりスムーズにステップアップできるようにし、小中高連携を意識した算数・数学の授業研究を、様々な先生方と取り組んでいます。例えば、小中、中高の接続をどのようにスムーズにできるのか、などです。児童生徒は連続的に成長します。制度的には小・中・高はつながりますが、算数・数学の指導は必ずしも連続的であるとは限りません。この課題を解決するのは簡単ではないですが、今後も教育現場にいた経験を活かしつつ、地道に深く追究していくつもりです。
 最後に学生の皆さんへのアドバイスですが、前述のとおり、私は出会った多くの人にアドバイスをもらい学び直すことで自分の学びを高めてきました。一人で専門分野を学ぶ皆さんは、行き詰まることも多いでしょう。そんな時は、スクーリングの際に他の学生と積極的に数学や数学教育について意見交換してください。また、自習する時は、例えば架空の児童生徒などに説明することを想定して、声に出したり、紙に書いてみてください。学習したことをアウトプットすることで散らばっている知識が整理されていくはずです。そこで、また新たな気づきがあるのではないでしょうか。

[経歴]
神戸大学理学研究科数学(理学修士)、京都府公立学校教員、近畿大学教育部教職を経て現在に至る。

(佛大通信2017年1月号より)

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