佛大通信ちょっと読み2018年08月号
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社会福祉学を学ぶ人にとっての礎となる1冊。日本の社会福祉論の構築に尽力した岡村重夫先生の『社会福祉学』、各論と総論。学生時代から今も、折にふれて読み返すそうです。達筆な岡村重夫先生が晩年に梅を題材に描いた一幅。恩師である中村永司先生へ贈られたものを、中村先生がご逝去された際、ご遺族から譲り受けた貴重な品。研究室に飾られています。サプリ03サプリ02    社会福祉学固有の視点とマクロとミクロの融合へ 大学院での研究で、最も衝撃を受けたのが当時本学の教授をしておられた岸勇先生の書籍「公的扶助とケースワーク」という本でした。私は、ソーシャルワークを深めたいという動機で大学院に進学しましたが、ソーシャルワークは社会福祉学固有の技術ではあるけれども、生活保護適正化のもと、その技術の用いられ方に議論が及んでいました。簡単に表現すれば技術は用いる者によって中立であり、援助を必要とする方へのエンパワーメントにもなる反面、逆に抑圧的な技法として用いられる可能性があるということです。その時から、マクロな視点とミクロな視点を融合したソーシャルワーク研究の必要性を探求するようになりました。その結論は私の生涯にわたる研究テーマになろうと考えています。社会福祉学研究と社会福祉実践の岐路に双方を取り持ちウィンウィンに 団塊世代が後期高齢者になる2025年はもう目前ですし、今では2040年問題とも言われています。岡村重夫氏の著書にも引用されている、アメリカの心理学者、アブラハム・マズローは、自身が提唱した「欲求階層説」で生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、承認の欲求があると説いています。最高位は自己実現の欲求。自分の可能性を探求するゴール、いわば自己実現を通信での学びでぜひ達成してください。「ゆりかごから墓場まで」のスローガンで知られたイギリスの福祉国家構想はかつて主流でした。しかし、現在では福祉を取り巻く環境は変化しています。グローバルな時代のなかで日本発の世界に発信できる福祉学研究を目標に日々研鑽努力しております。学びの処方箋研究室訪問9一方で、高齢化の速度に対して、若者の人口減少が著しく、その急変は先進国と比較しても特異な状況にあり、わが国の判断が難しい時代にあります。私のつたない経験から、少しでも福祉分野に関心を示す学生に、安心して業界に送り出しながら、質の高いサービスを提供していただきたい。また、若者の将来もささやかであっても、幸福な人生を歩むことができる制度設計を願ってやみません。私は現在高齢者福祉領域を中心に研究をしております。また、難しい課題ですが高齢者の虐待予防研究を海外の実践事例や法体系から学ぼうとしております。私の研究テーマを聞いた方の多くは誤解しているように思います。研究の本質は予防なのです。その本質は、「自分がされたくないことを他者にしない」といったごく当たり前のことではないかと思っております。排除ではなく共生であり、争いではなく相互理解であるといえます。その実現には、コミュニティーや、行政、司法、医療、ソーシャルワーカー、カウンセラーなど様々な方々と協力しながら取り組まなくてはならないと思っております。福祉を仕事にしていくことを試行している若者と、高齢者がウィンウィンの関係になることが大切。そして次世代を担う若手世代の支援のあり方も、真剣に議論しなければなりません。日本が今後どのような福祉モデルを築くのか、その青写真が今求められています。

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