佛大通信ちょっと読み2018年01月号
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歴史学部歴史文化学科 安藤 佳香渦文のひみつくんかもんだいえかたど 衣文はときに渦巻くように表されることがあります。仏像では菩薩の裙(下半身を覆う巻きスカート状の布)正面の合わせ目などに現れることが多く、渦文と呼ばれています。図1では、両脚の膝辺りに巨大な渦文が配されており、中心が高くなる何とも不可思議な渦巻き方を見せています。図2では如来坐像の大衣の胸元の左右に二か所ずつ、計4個の大きな渦が表されています。縦列してS字をなす渦は、シンボリックで抽象的なかたちとなって拝者の眼と心に飛び込んできます。お像の豊満な腹部を強調する二重の並行線との組み合わせが、互いに響きあい独特のリズムを奏でます。図3を見てみましょう。如来立像の衣の端に累々と渦が続き、正面だけでも実に16個を数えます。こちらも縦にS字を半ば重ねながら連なっています。いずれも現実にはあり得ない現象ですね。このような超現実的な不思議な渦文は、日本の8世紀~9世紀の一木彫(一本の木から彫り出された仏像、霊木・神木が用いられることも多い)に集中しているのです。 渦形は世界各地の古代文明にしばしば顕れます。それは何かが始まり生まれようとする際の始源のエネルギーを象ったもの。仏像の着衣に生じる渦も、尊像が内包する聖なる力の顕現と捉えることができます。見えないけれども確かに存在する神秘の“力”。うごめく渦文は異なる時空から今まさに私たちの眼前に立ち現れてきているのです。再発見! 仏教美術の魅力第6回123図1.蓮華寺 木造十一面観音立像(部分) 徳島県図2.禅定寺 木造阿弥陀如来坐像(部分) 島根県図3.安楽寺 木造如来形立像(部分) 京都府

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