佛大通信ちょっと読み2017年09月号
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サプリ03サプリ02「今、興味を持っているのが家族と当事者の問題」と話す先生推薦の書。『日本の精神障害者-その生活と家族』『精神障害者家族の相互関係とストレス』(ともにミネルヴァ書房)。特定の領域における人々の主観的経験的世界を描く『グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践』(弘文堂)と『シンボリック相互作用論』(勁草書房)の2冊。対人援助領域の研究に適している研究手法です。養鶏といった病院近辺の地場産業の事業所に協力事業所になってもらい、働く場を確保することでした。でも、多くの統合失調症の方は、内向的で、過緊張傾向のため、疲れやすいのです。午前中だけの勤務が、終日勤務と同じくらい疲れるらしく、すぐに「しんどい」と言い出します。駆け出しの頃の私は、よくわからないから「何を甘いことを…」と言い返していました。病気と障害の併存した「障害者」と理解できていなかったのです。 もうひとつ忘れられない出来事は、3人の障害者と初めてグループワークをした時のことです。私が席を外している間に、初対面の3人が、屈辱的扱いを受けた「保護室」(隔離部屋)の入院体験を笑いあっていました。「こんなこと、話せるのはここだけ!」と、実に爽やかな表情でその理由を話してくれました。専門職の支援だけはなく、仲間同士の支え合いが、社会参加には不可欠だと学んだ瞬間でした。 実践は、かつて「是」とされていたものが、次の時代に「非」とされることの連続です。統合失調症には、友達は出来ない、と言われていましたが、今ではそんなことは誰も言いません。佛教大学との縁をいただきましたので、現場で学んだことを次の福祉の担い手に伝えたいと思いました。学生時代には理解できなかったことが、現場で仕事を進めるなかで腑に落ちることが良くありました。実体験が伴うことで知識は血肉化していきます。テキスト履修でもスクーリングでも、興味を持ったことがあればぜひ現場へ足を運んでください。そしてできれば1日滞在してみてください。肌で感じられることがあるはずです。「研究室に並んでいるのは主に学術書ですが、自宅の本棚に入りきらなくなった小説やビジネス書なども一部持ち込んでいます」と苦笑する読書家の先生。気分転換のために足を運ぶ場所は映画館だそう。学びの処方箋研究室訪問9当事者と家族それぞれの自己現実とワーカーの関与のあり方を探究 ソーシャルワーカーの熟達には、一定の筋道があるのではないか。そんな問いが卒業生との関わりから生まれました。就職して間もない頃は、個別事例に関することが悩みです。もう少し経験を積むと、当事者を取り巻く役所や病院、施設等、地域全体のケアシステムの不備が気になります。このように経験を積むことで見える世界が変わることを可視化してみたいと思いました。新人時代は、「援助行為の正解探し」に必死で、中堅になると「関係機関とのチューニング」の時期と名づけ、理論の精緻化を目指しています。 最近は、家族がケアラー役割を担い続けるのはおかしいのではないか。という問いから研究をしています。世帯を分けて暮らし始めた当事者や家族へのインタビュー調査が主です。今、見え始めているのは、ソーシャルワーカーが関与している事例が少なくないということです。ひょっとしたら、価値実践を体現するワーカー像をリアルに描けるのではないかと期待しています。

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