佛大通信ちょっと読み2017年09月号
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6のですが、生でこういうふうに見せていただくとは夢にも思っていませんでしたので感動しました。 昨夏、日本4都市を巡回した中上健次原作の野外劇「日輪の翼」にも出演した重森さん。今年9月、同作品が東アジア文化都市2017京都「アジア回廊 現代美術展」の出展作品として、京都で上演されることになった。❖中上健次作品と『古事記』の意外な共通点❖斎藤:「日輪の翼」も『古事記』と同じく、神話の世界の物語ではないでしょうか。重森:はい、中上健次は神話の世界を描いているのだと思います。斎藤:中上は『古事記』もすごく読んでいますし、神話でつながっているという意味で、この対談では「日輪の翼」を紹介したいと思いました。野外劇ですが、場所はどこですか。重森:大きなトレーラーを設置しての野外劇ですので、場所が限られるのですが、今回は河原町十条に会場を特設しての公演です。その場所を調べてみると、元は大きな染工場だったことがわかったのです。私が演じますのはキクノオバという女性で、実在の人物をモデルに描いておりまして、先般の公演中にその方の肉声のテープが発見されました。中上がその方にインタビューしたテープが出てきたのですが、本当に過酷な人生を歩んだ女性です。中上文学で描かれている「路地」で生まれ、現在の義務教育の年齢で紡績工場に出稼ぎに出たり、その後も満足な教育を受けられないような苦難の人生を歩まれて、中上は敬愛をこめて「オバ」と呼んでいるのです。劇中では、近江の紡績工場に少女時代に働きに出されて苦労したことを回想する場面があるのですが、今年は京都公演なのでキクノオバたちは京都の染め物工場で働いていたことにしようと脚本も改訂されるようです。いま、私たちは当たり前のように高等教育を受けていますが、そういった方々のご苦労のもとに、女性の社会進出などもあるのだなと、いろいろと勉強させていただいています。斎藤:文学や芸能の担い手たちはどこか差別を受けるところがありますが、そこに新内も参加することが非常に興味深いです。邦楽で出演されるのは重森さんだけですか。重森:はい、私だけです。実際にキクノオバのモデルになった方のご親戚が三味線屋さんだったこともわかってきまして、キクノオバは花柳界でも働いていたことがあったので、おそらく三味線を手にされたことがあるかもしれません。いろいろと、ご縁があると思っています。演奏の後には引き続き重森さんと斎藤先生の対談が行われ、京都芸術センターのボランティアの方々に話を聞いていただいた。斎藤先生には初披露となる、『古事記』を題材にした新作「サホビコ・サホビメ」を熱演する重森さん。この日、重森さんが演奏に使った三味線は、先代家元から譲られた貴重なもの。通常、新内には中棹三味線が使われる。『古事記』は語り物という点で江戸の浄瑠璃ともつながっていますから、新内の題材にはぴったりかもしれません。サホビコ・サホビメは神代の話なのに意外にも人間くさくて、具現的な人間の感情が描かれていると感じました。TRAVEL.2新内の世界を体 感伝統をつなぐ・未来をつくる京都をめぐる斎藤先生重森さん新作の譜面。舞台装置一つない新内語りだが、サホビコ・サホビメ、そして帝の役もすべて一人で演じ、聴く者をその時代や物語の中に誘う。

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